
くんですね。しかもクラブを担いで。その地域では絶対にだめな行為です。日曜日というのは安息日で、アメリカの人たちは、その時間に家族で教会に行くわけですよ。その家族の人たちとゴルフに行く日本入4人が、すれ違う。これはもう、「あの連中は何だ」という話になる地域が宗教的にそういう雰囲気の日である場合には、自分の行動がどう見られるか考えるのは、市民の最低限の資格でありまして、そういう点からいくと、先ほどのあいさつをするとか、きれいにするとか、それからにこっと笑うとか、細かいルールというのは、若い人たちに絶対教えておかないといけないと思うんですね。
その機会は本当にない。その機会は家庭にもないし、学校にもない。だから、何かどこかで教えてほしい。青年の家が何も目的なしで来て泊まって遊びなさいというだけではなくて、一定の枠組みを持ってもらいたい。その一定の枠組みを持った上で、若者たちの発意で自由にいろいろやれるものを入れていただきたい。
もう1つ、ぜひ青年の家で訓練してほしいのは自己表現の能力ですね。表現能力というのは、学校でもなかなかできない。家でもできない。異質の人たちが交わるところで必ず自己表現の能力というのは鍛えられる。同じ教室で、同じクラスメートではなかなか身につかない。同じ家の中で、しかも最近一人っ子が多いから、親と話すだけじゃ、絶対につかないですね。大勢がワーッと、関東から来た人もいれば、九州から来た人もいるおじいさんもいれば、それから子供もいるというふうな、世代もいろいろ、地域もいろいろ。面でも、縦でも横でも、いろいろな人が交わるところで必ず自己表現の訓練というのはできるわけで、これは積極的にぜひプログラムに入れてもらいたいなと思っているんです。
宇宙飛行士の若田光一さんの記者会見が日本記者クラブでありました。会見の内容はほとんど新聞に出ていますが、出ていないことが1つあって、若田さんが言ったのは、私は、宇宙ステーションの訓練の期間、1週間、記者会見の練習をさせられたというんですよ。成功する前も新聞記者に追っかけられるわけですが、成功して戻ってくると必ず記者会見をやるそのときにどういうふうに答えるかという訓練を1週間やった。自分をどう表現するかという訓練をやった。宇宙飛行士の訓練の中にこれが1週間もあることに、僕はこれまた感激したんです。
どんな訓練をやったんですかと聞いたら、自動車で勤務先に来ますね。駐車場で自動車をパッとおりると、ふわっとビデオカメラにつかまるんですって。いきなりワーッと撮られてインタビューされるらしい。インタビューをいろいろされて、それに答えて、それがカメラにおさめられて、ワイドショーレポーターの取材を受けておるようなものですね。事前にまったく知らされなくてそういうのがパッと来て、今度は撮られたのを見て、答え方がどうだったこうだったというようなことをチェックされるこんな訓練まで受けるということでありました。
若田さんは記者会見かうまかった。我々に対しても過度にしゃべらないし、適度にしゃべるし、おごったところは全くない。正確に物事はしゃべる。しかし、表情はにこにこ明るいし、いっぺんに好感を持って、年寄りの記者がたくさんいたんだけれども、「あんたはNASAで訓練を受けて、まさに合格した」「記者会見の訓練にも合格している」「珍しい表現力のある日本人である」ということを、ある記者が質問のついでに言っていましたけれども。これからグローバルな市民として生きる場合には−別に記者会見の機会はだれもかれもあるのではありませんが、しかし・アメリカに駐在すると、アメリカの学校は、必ず日本人の親なんかを、日本の話をしろと呼んでくれるんですよ。呼ぶと、自分の故郷のことを1時間ぐらいしゃべる。それをやらないとだめなんですね。
今までは、自分は英語が下手だとか、しゃべるのはなれていないからと断つちゃう。そこでコミュニケーションのチャンスを逃しちゃうんですよ。もっと通じ合うことができるのに、そのチャンスを失って、結局は地域から孤立してしまう。5年間いても、アメリカをわからずに帰ってしまうということが多いんですが、何もわからなくたって、どんどん行ってしゃべれば、みんな喜んでくれる。
私の娘が3ヵ月ぐらいアメリカでホームステイしていたんですが、ホームステイ先の子供の学校から日本の話をしろといって、僕の子供は割と物おじし
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